7.「赤ちゃんに優しい病院」の問題点
1989年、WHO/ユニセフは「母乳育児を成功させるための10カ条」を長期にわたって尊守し、実践する産科施設を「赤ちゃんに優しい病院」として認定した。ところが、「母乳育児を成功させるための10カ条」は日本の赤ちゃんには非科学的な管理法である。非科学的とは、日本の分娩室(24〜26℃)で生後30分以内にカンガルーケアを長い時間すると、児の体温下降がつよく「低体温⇔低血糖」の悪循環に陥る危険性が高くなる事である。栄養が未だ摂れない赤ちゃんにとって、「低体温⇔低血糖」は明らかに児にとって不利益である。カンガルーケア中の事故が多発しているにもかかわらず、「赤ちゃんに優しい病院」が増えているのは重大な問題である。

7−1.「赤ちゃんに優しい病院」のメリット
メリットは、赤ちゃんではなく病院側に

@WHO/UNICEFが認めた「赤ちゃんに優しい病院」の認定書がもらえる。
厚労省が後援しているために、病院の宣伝効果は絶大である。
A「赤ちゃんに優しい病院」のメリットは助産師確保に有利に働く事である。
産科開業医にとって助産師不足は深刻である。助産師以外の看護師に内診させると保健所の立ち入り検査がある。助産師は「赤ちゃんに優しい病院」に集中し、人工ミルクを使う開業医に新卒助産師は就職したがらない。助産師学校は第4条(カンガルーケア)・第6条を(完全母乳)を徹底的に教育指導し、人工ミルクを飲ませる事を良しとしないからである。
B重症黄疸の増加によって入院治療費(診療報酬)が増え、施設にとって経済的効果が大きい。
C病院側にメリットはあっても、デメリットは無い。病院に優しい制度である。

7−2.「赤ちゃんに優しい病院」のデメリット
デメリットは、赤ちゃん側に

@生後30分以内のカンガルーケア:日本の分娩室は寒すぎ⇒低体温症が増える
・低体温⇒低血糖⇒ヒアリ・ハット(ケイレン・呼吸停止など)の事故を増やす
・低体温⇒消化管血流量減少⇒初期嘔吐(哺乳障害の原因)・便秘(重症黄疸↑)
・低体温⇒恒温状態への移行が遅れる⇒自律神経機能低下⇒生命維持を脅かす
A完全母乳⇒(特に生後3日間の母乳分泌不足)⇒栄養不足⇒重症黄疸が増える
・重症黄疸⇒光線療法⇒NICU入院児の増加(母児を隔離)⇒NICU不足を促進
・重症黄疸⇒難聴・脳性麻痺の危険因子

<結論>
厚労省は、WHO/UNICEFの「母乳育児を成功させるための10カ条」の安全性を確認するまでは,「赤ちゃんに優しい病院」の後援を一旦中止すべきである。
「赤ちゃんに優しい病院」は重症黄疸が多いだけでなく、カンガルーケアの実態調査では、約50%の施設でヒヤリ・ハット事例が発生し、事故は起こりうるものと認識しそれに備えることが重要と報告しているからである。