朝日新聞
2001年1月19日掲載記事
 福岡市で産婦人科医院を開業した医学博士でもある久保田史郎さんが、同医院で生まれた約8千人の赤ちゃんの様々な臨床データを基に、「安産と予防医学」をテーマにした本を自費出版した『THE OSAN』で「安産は元気に育てるには何をすればいいのか。もの言わぬ赤ちゃんのメッセージです。」と久保田さんはいう。
 本の主な柱は安産、痛みを和らげる産科麻酔、赤ちゃんの体温管理や栄養、それに、乳幼児突然死症候群(SIDS)。安産については1986年から10年間5083人の出産データを分析、妊婦の理想的な体重増加などを記す。麻酔では部分麻酔の「神経ブロック」を紹介し、これまで6年間の約3千例から「和痛分娩」の安産効果を挙げている。
 多くの臨床データを示しながら「問題提起」もしている。完全母乳栄養法もその一つ。生まれたばかりの赤ちゃんは栄養不足になることを指摘し、生後すぐ糖水や人工乳を飲ませることが順調な成長にもつながった、と説く。またSIDSでは、着せ過ぎなどによる高体温が一因という仮説を立てて検証している。
 久保田さんは、九大医学部の麻酔科と産婦人科に合わせて十年間勤めたあと、福岡赤十字病院を経て’83年に開業した。産婦人科では分娩や新生児にかかわる周産期医学を専攻し、赤ちゃんの体温調節について取り組んだ。開業後も赤ちゃんの体温や体重変化など、一人ひとりの出産データをコンピュータに入れて研究を続けている。本はその集大成として著した。
B5版で約170ページ、福岡市の紀伊国屋書店福岡本店で販売し、消費税込みで3000円。