1987年3月11日 西日本掲載記事
安産願い、妊娠水泳盛ん
 安産で五体健康な赤ちゃんを、というのは妊婦みんなの願い。そのためには、分娩に備えた妊婦の健康管理が大切で、最近はマタニティースイミング(妊婦水泳)が注目されている。九州・山口には、この妊婦水泳を実施しているスイミングクラブが30ヶ所以上という盛況で、妊娠は安静第一と言われた時代とは様変わりしている。
 妊婦水泳を指導している久保田史郎医師(福岡市中央区平尾2丁目、久保田産婦人科医院院長)に「妊婦水泳の効用」について聞いてみた。
 妊婦水泳は妊娠12週からの妊娠が対象。午前11時から午後1時までの子宮収縮、つまり陣痛が起こりにくい時間帯に、一時間水泳をする。もちろん、水泳が可能かどうか婦人科的健診、超音波による胎児・胎盤の評価、心疾患の有無などメディカルチェックを受ける。
 合格すれば、水に入る前に、体重、血圧、脈拍などを測定・まず、背伸びや首回転の水中体操から始める。出産泳法の後に300メートルから500メートルを泳ぐ。泳げない人はビート板などを使う。精神をリラックスさせる呼吸法(ラマーズ法)、水中座禅をして、仕上げの整理体操で一時間の妊婦水泳を終わる。週一回、栄養指導も実施する。
 水泳は浮力を利用するため、他の運動と比べて、運動中の事故がほとんど無いとされている。その意味では妊婦の運動に最適でその効果は、1、心肺機能の改善と出産に大切な腹直筋のアップなど体力が向上する。2、妊婦に多い不定愁訴(腰痛・肩こり・便秘)の解消。3、末梢血管の拡張で痔、静脈瘤妊娠線などが少ない。4、仲間作りによるストレス解消などが挙げられている。
 これまでの、調査では、水泳をした妊婦は、初産の場合の分娩時間が5、6時間しかかからないのに対し、水泳をしない妊婦は約12時間という。
 それだけ、時間的にも安産型で、しかも、胎児は3kg前後がほとんどで未熟児など早産例ははほとんど皆無に近いという。
 妊婦水泳は、7年前日本医大の産婦人科グループが始め、久保田医師は昭和58年8月から福岡市中央区大宮の福岡スイミング一本木スクールのプールに導入、これまで、約七百人の妊婦が参加した。久保田医師は「分娩はマラソンと同じ程度の体力を必要とする。そのため、妊娠は日ごろから体力をつけておけば安産になる。対象を初産婦メインにしているが、分娩に水泳が効果があることを医学的にも立証できた。この場合、妊婦は専門医によるメディカルチェックを受けることが大切で水泳も専門のインストラクターの指導が望ましい。」と言っている。
 久保田医師は、出産した母子を対象に“ラッコの会”を結成し母子の指導管理を行っている。