日経メディカル 1996年7月10日号 掲載記事
”和痛“分娩で出産を実感
久保田産婦人科医院院長
久保田 史郎 氏
 
 「最初に麻酔って」聞いたときは、何も感じられないまま子供を産み落としちゃうのかな、って思いました。でも、先生の麻酔だと、痛みはずっと楽になるのに、ちゃんと陣痛の波を自分で感じられる。いきむタイミングも自分で分かって、自分で出産したんだという実感があります。」出産を終えたばかりの母親が目を輝かせて話す。
 久保田氏は2年前から、分娩の際、希望者全員に陰部神経ブロックを行っている、我国の「無痛分娩」の主流は硬膜外麻酔。下腹部と腹、産道の痛みを全て取り除く。ところが、陰部神経ブロックでは、麻酔が効くのは産道だけ。痛みを無くすのではなく、痛みを和らげる、いわゆる”和痛分娩“と言うわけだ。
 「お産は最後が痛い」と言われるのは、赤ちゃんが産道を通る時の痛みを指してのこと。それが十分んい取り除かれるので、「経産婦は『最後が本当に楽だった。前の出産の時と比べたら痛みは10分の1くらいで済んだ』といいますよ」(久保田氏)。硬膜外麻酔で、ときにみられる、血圧低下や陣痛の微弱化も起こらないと言う。
 「陰部神経ブロックは、欧州では分娩時の麻酔としてごく普通に行われている。安全性が高く、痛みを軽減でき、出産を実感できる、三拍子そろった手法」と久保田氏はわが国での今後の普及に期待している。