リビング福岡 9月1日掲載記事

質問
初めての妊娠です。お産の痛みが怖いのですが何かよい方法はありますか?
第3回「無痛分娩(産科麻酔)って何ですか」

解答
 わが国で無痛分娩が普及しない理由として自然分娩志向/麻酔は恐いなどがありますが、最も大きな理由は産科麻酔を安全に行う専門の麻酔科医が少ないことです。麻酔には全身麻酔と局所麻酔がありますが、産科麻酔では赤ちゃんへの安全性が通常よりもさらに要求されます。全身麻酔はお産の実感がないことや赤ちゃんへの副作用などから減っています。
 硬膜外麻酔は背中のチューブから局所麻酔薬を注入する方法で、欧米ではほとんどこの方法です。利点は麻酔薬の注入時期や量の加減で除痛の範囲や時間を調節できることです。欠点は、しばしば微弱陣痛や血圧低下が起きる/専門の麻酔科医が少ない/手技が難しい/昼間の計画分娩となり陣痛促進剤の使用が増えることなどです。
もう1つの局所麻酔である陰部神経ブロックは、分娩第T期の痛みは取れませんが、最も痛い第U期(分娩直前の1〜2時間)の痛みを60〜80%和らげ、会陰筋を弛緩させ赤ちゃんの頭を出やすくし、安産効果に優れています。
当院では約3000人以上がこの麻酔を受けましたが、手技も安全で副作用もなく費用も安価で、皆さんから好評です。
お産の痛みを完全に取ることに不自然さを感じる人もいます。産婦さんは、自然の陣痛に沿った/ほどほどの陣痛を体験し/お産の喜びが実感でき/安全なお産、すなわち、満足度の高いお産を望んでいるようです。次回は「本当の自然分娩とは?」です。