水中散歩の特徴
 妊婦水泳は、正常妊婦しかも泳げる妊婦さんが対象でした。
この20年間、妊婦水泳の安全性と予防医学的な効果に注目し、妊娠中毒症や静脈瘤などの合併症をもった妊婦さんの予防・治療を目的に始めたのが水中散歩です。
■水中散歩と妊婦水泳の違い
 妊婦水泳は運動量が多いため脈拍が早くなり、血圧の高い妊娠中毒症の妊婦さんには禁忌でした。一方、水中散歩は脈拍、血圧への影響がなく、妊娠中毒症になりそうな妊婦さんの浮腫・高血圧の予防と治療に満足いく効果を発揮します。
■水中散歩の生理学的作用
1) 利尿効果にすぐれ、浮腫(むくみ)の予防と治療に著効
2) 末梢血管拡張作用によって血流を改善、静脈瘤の予防と治療に著効
3) 利尿作用+末梢血管拡張作用によって血圧の上昇を防ぐ
4) 筋緊張を和らげ、組織(筋肉)への血流を良くし、腰痛症・筋肉痛の治療に効果的



水中散歩の長所は、高血圧、浮腫、下肢静脈瘤、腰痛症、便秘、などの疾病の予防と治療に著しい効果を発揮します。当院の妊婦水泳グル−プ(4000人)に妊娠中毒症が発症しなかった理由は、末梢血管拡張作用と利尿効果が、高血圧と浮腫を防いだからと考えられます。 
水中散歩は、水の浮力が妊娠子宮(胎児)を頭方へ持ち上げようと働くため、骨盤位(逆子)を直す『逆子体操としての役割』も期待できます。逆子体操は、陸上ではお尻を持ち上げる胸膝位が一般的です。しかし、水中では浮力があるためお尻を持ち上げる必要はないのです。当院では、妊娠8ヵ月以後の骨盤位は、水中散歩で逆子を直しています。きつい胸膝位に比べ、水中で散歩を楽しみながら、自然に逆子を直す方法として、今後、さらなる水中散歩の普及が期待されます。
久保田史郎 4/10/2013