赤ちゃんの理想体重は2800〜3200g

 昔の妊婦さんは、お腹の赤ちゃんの分と合わせて二人分食べなさいと言われてきました。しかし、最近の赤ちゃんの巨大化傾向は難産を増し、陣痛促進剤の使用、吸引分娩や帝王切開による出産を増加させる一因である事が分かってきました。そのために、我国では、妊婦の体重管理の重要性が指摘され、安産のための栄養指導が妊婦健診・母親教室を通じて行なわれる様になりました。
 終戦後の低栄養時代、昭和21年のわが国の新生児の平均体重は2870gでしたが、高度経済成長時代の昭和58年では3250gにまで増えています(図1)。妊婦さんは赤ちゃんの分まで「二人分食べなさい」と言われたのは、食べ物が少なかった過去のことなのです。現代の間違った食生活習慣によって生じた妊婦の肥満と赤ちゃんの巨大化傾向が、今日の難産と帝王切開を増やす原因になっていたのです。

 久保田産婦人科では開業(1983年)以来、妊婦の太り過ぎ・巨大児・妊娠中毒症・便秘などの生活習慣病を防ぐことを目的に、栄養指導と水中運動(水泳・散歩)を積極的に行なってきました。その結果、新生児の平均体重はこの10年間、3050g(男児3100g、女児3000g)前後に落ち着き、難産域3500g以上の赤ちゃんが全国平均の約半分以下に減少しました。当院の栄養指導法は安産効果を生み、帝王切開率を9%(栄養指導前)から6%(栄養指導後)にまで減少させたのです(図2)。


■当院の栄養指導法の特徴

 太り過ぎの妊婦さんを対象とした食生活習慣についてのアンケート調査を行ないました。今まで、妊婦の太り過ぎはカロリーの取り過ぎが原因と考えられてきました。しかし、当院の調査によると、最近の肥満妊婦の特徴は、朝食抜き・夕食時間が遅い・夕食後のデザート、そして運動不足、などに共通した肥満の原因があることが分かりました。そこで、久保田産婦人科医院では、(1)妊娠期間中の1日の摂取カロリーを妊娠前期、後期とも同じ1900キロカロリーにする様に指導(厚生省基準では30才の妊婦の場合妊娠前期が1850キロカロリー、後期が2150キロカロリー)。(2)肥満度と関係なく、肥った方もやせ気味の妊婦さんも一律に1900キロカロリーとする。(3)朝食は栄養のバランスを考え、必ずとる様に指導(特に、肥満妊婦や便秘の人は和食で)。(4)夕食はできるだけ午後7時までに、夕食後のデザート(果物)は極力さける。・・・以上の4項目をすすめ実践してきました。