「授乳・離乳の支援ガイド」が出来るまでの経緯
産婦人科医 朝倉委員・今村委員は、完全母乳・カンガルーケアに反対していた。

第1回「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」策定に関する研究会 議事録
日 時: 2006年10月11日(水) 14:00〜16:00
場 所: 厚生労働省中央合同庁舎第5号館5階共用第7会議室
委 員: 裄V座長朝倉委員、今村委員、岩田委員、瀧本委員、堤委員、鱒渕委員、宮下委員、向井委員、山城委員
事務局: 千村母子保健課長、河野母子保健課栄養専門官、當山母子保健課主査、関谷母子保健課長補佐、齋藤母子保健課長補佐

宮下委員(助産師)
母乳育児支援の基本方針と意思統一ということで母児同室・同床とし、母親から赤ちゃんを離さないことを基本にして自律授乳を原則にしました。哺乳瓶の使用や糖水などの母乳以外の補給もしないということでスタートしました。
第2段階としましては、開院後3カ月を経て母乳育児に関して挙がってきた問題点についての意思統一を図りました。
出産後2、3日目の体重減少が10%を上回る場合、飢餓熱もしくは排尿回数や濃縮尿、低血糖など実際に起きた症例などを検討しながら改善や基準作成を進め、母乳育児に関する病院独自の基準を作りまして、生理的体重減少率の最低ラインは15%としました。これは正常な出産の37週以降からということと赤ちゃんの生まれた体重2,500グラム以上という、正常児に限ります。また、スタッフに対しては体重などの観察点や、黄疸と母乳育児、出生児体重と血糖チェック等対応策のアウトラインを作成し、基準から逸脱が予測されるケースは医師と共に援助して、そして医師の指示もこの基準に基づいて行われました。

○今村委員(産婦人科医)
カンガルーケアとか母児同室が効果的であるというのはよくわかるのですが、体の制御であるとか代謝によい影響を与えるというのは、お一人のレポートで、それだけでエビデンスとするには少し弱いのではないかと思うのですが、その他にもそれをサポートする報告か何かがあるのでしょうか。

○宮下委員(助産師)
実際に母親たちが直接カンガルーケアを行っていて、もちろん健康に生まれた赤ちゃんだけですけれども、低体温になっているという事実はありません。

○今村委員、アシドーシスなどにも言及されているので、そういうこともサポートするエビデンスがあるのかということです。
○宮下委員、大変申し訳ありません。今日はできておりませんが資料はあります。

第4回「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」策定に関する研究会
議事録から抜粋
日 時: 2007年1月31日(水) 14:00〜16:00
場 所: 女性と仕事の未来館 第1セミナー室
出席者:
委員
柳澤座長朝倉委員、今村委員、岩田委員、瀧本委員、堤委員、鱒渕委員、宮下委員、向井委員、山城委員、吉池委員

○朝倉委員(産婦人科医)
どうしても言いたいことがあるのですが、これも授乳に関する方法論と言いますか、方法論ではカンガルーケアが良いということで、事例の中にはカンガルーケアが入っていますし、それから、授乳を推進するためには、30分以内にとは書いていませんけれども、できるだけ早く授乳をするようにと書いてあります。それは具体的にはカンガルーケアを想定して書いていらっしゃるかどうかです。カンガルーケアは、確かに非常に理想的なやり方だと思うのですが、ただどうも安全性というものがまだ確立されていないし、有効性もまだ確立されていないようなのです。というのは、産婦人科医会で医会報というものが出ていますけれども、1月の医会報でカンガルーケアに対する警鐘の記事が出ました。私自身は検証していないのでわかりませんが、そういうことがあるので、この事例の中でカンガルーケアについて書くということは、厚生労働省がお墨付きを出したように取られないか。やってはいけないということではないですけれども、安全面で非常に注意してやることが必要だと、どこかにそういう警鐘を鳴らしておかないといけない。国がこぞって勧めているという印象で取られるのは、少し時期尚早という感じがしたのです。

○柳澤座長(小児科医)
どうもありがとうございます。ただ今のご意見に対して他の委員の方からはどうでしょうか。今村委員、どうぞ。
○今村委員(産婦人科医)
 私も、朝倉委員と同じ懸念を非常に強く持っています。といいますのも、もう10年も前になりますが、新生児にうつ伏せ寝させるのが、非常に短期間ではありますけれども一時推奨された時期があり、全国の産科医療機関でそれを多くの者が見習ったのですが、突然死症候群というのが言われてきて、今ではほとんど「やめなさい」ということになっています。カンガルーケアが同じような経緯をたどるとは思いませんけれども、こういうものを勧めるときには、よほどの注意が必要だろうと思います。実際に、本当にカンガルーケアが原因なのかどうかはわかりませんが、事故例が報告されているということを考えてみましても、やはり相当の注意というのが必要なのではないかと思います。

○柳澤座長
 ありがとうございます。他にございませんか。どうぞ、宮下委員。

○宮下委員(助産師)
 私も、カンガルーケアの利点、それからデメリットについても、赤ちゃんが静かに休むということなのですが呼吸状態に異常を起こすという症例も報告を受けています。ただ、そういった中で、カンガルーケアをすることによって、赤ちゃんがとても安心したり、体温の上昇につながったりというメリットもとても大きいので、肌と肌の触れ合いの部分で、言葉の使い方を変えて載せられるとよいのではないかと思います。そして母親と赤ちゃんが一緒にいるときは必ず医療者がそばにいるなどの注意書きを入れるとか、もしくはこういう状態になったらきちんと連絡するとか、そういうものを附帯するというのはいかがでしょうか。

○柳澤座長(小児科医)
 他にございますか。今ご指摘があったように、ここではカンガルーケアという言葉は使っていませんけれども、生まれたらすぐに母親と肌を接するということに関しては、もちろんメリットも大きいと私自身も思っていますが、注意すべき点もあるということをこのガイドにも何らかの形で記載する必要があるというご意見だったと思います。

厚生労働省雇用均等・児童家庭局 母子保健課 予算係
電話03−5253−1111(内線7936)

第5回「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」策定に関する研究会 議事録
日 時: 2007年3月14日(水)14:00〜15:05
場 所: 厚生労働省5階共用第7会議室
出席者:
委員
柳澤座長朝倉委員、今村委員、岩田委員、瀧本委員、堤委員、鱒渕委員、宮下委員、向井委員、吉池委員

○今村委員(産婦人科医)
この支援ガイドをここまで書き上げてしまってこれを修正するというのとは少し違うのですが、産婦人科の開業医の先生から電話と文献の送付がありました。その中で、公明党の国会議員との話し合いもされているようなの 自閉症といいますか精神発育障害というようなものが、過度の完全母乳を要求することによって起こっているかもしれないということで、学会の発表もなさっておられ、で、そういうご意見もあったということだけご報告させていただきたいと思います。

○柳澤座長(小児科医)
それについて今、それが事実なのかと議論するにはあまりにも我々の知識などデータが不十分だと思いますので、そうした指摘もあったということにこれからも留意して見ていくという取り扱いにさせていただきたいと思います。
 今村委員からは先ほど伺いましたが、何か他にもあればどうぞ。

○今村委員(産婦人科医)
 この支援ガイドについて開業医の先生からの意見を幾つか求めました。一般的に言いまして、母乳栄養の優位というのは大体認めておられる方が多いのですが、ただそれをストリクトに求めるということについてはもっと緩やかなものでよいのではないかというご意見が多くありました。
その中の1人はカンガルーケアや完全母乳についても疑問を持っておられて、それを非常にいろいろなところで発表なさっているという経緯もございましたので、本当に混合栄養が劣っているのか、明らかなエビデンスがあるのかということも、やはりどこかで検証していただきたいと思います。

委員の紹介

・朝倉啓文委員(日本医科大学教授 第二病院女性診療科・産科部長)
・今村委員(日本医師会常任理事・産婦人科開業医)

・瀧本秀美委員(国立保健医療科学院生涯保健部母子保健室長)
東京医科歯科医学部卒業、産婦人科医(栄養学が専門)
・裄V正義委員(恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所所長)、
元東京大学小児科教授

・岩田力委員(東京家政大学教授、)
 元東京大学小児科助教授
・山城雄一郎委員(順天堂大学医学部小児科学講座教授) 日本小児科学会副会長
・吉池信男委員(独立行政法人国立健康・栄養研究所国際産学研究センター長)
・宮下美代子委員(みやした助産院院長、助産師)
・堤ちはる委員(恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所栄養担当部長)
1979年日本女子大学家政学部食物学科卒業。母子栄養学、保健栄養学
・鱒渕清子委員(栃木県真岡市役所健康増進課副主幹、看護協会第2副会長)
・向井美恵委員(昭和大学歯学部教授)