国(厚労省)は、分娩直後のカンガルーケアの危険性を知っていた


平成 20 年度こども未来財団調査研究事業

平成20年 こども未来財団は、分娩直後に行われる母子接触(分娩直後のカンガルーケア)の実態を把握するために、全国の「赤ちゃんにやさしい病院」を対象に実態調査を行っていた。42施設から回答(回答率87.5%)が得られ、23施設(54.8%)で原因不明のチアノーゼや心肺停止、体制が崩れて転落しそうになったといった事例 57例が報告されていた。厚労省は、こども未来財団の「妊娠・出産の安全性と快適性確保に関する調査研究」で、分娩直後のカンガルーケアの危険性を把握していたのである。事故は繰返されているにもかかわらず、分娩直後のカンガルーケアを早期母子接触に名称を変えただけで、早期母子接触には体温上昇作用があると科学的根拠の無い論文を掲げ、今もなお安全対策の欠如した「授乳と離乳の支援ガイド」を推進しているのである。下記の57例がカンガルーケアの危険性を物語っている。分娩直後のカンガルーケア事故は起こって当然である。

<57例の内訳>
@気道閉塞・窒息・・・・・・・・・10例
A呼吸障害・無呼吸・・・・・・・14例
B原因不明のチアノーゼ・・・・9例
C不明・・・・・・・・・・・・・・・・・・12例
D低体温・・・・・・・・・・・・・・・・・2例
E低血糖・・・・・・・・・・・・・・・・・2例
F転落しそうになった・・・・・・・2例
G先天異常・・・・・・・・・・・・・・・6例

■妊娠・出産の安全性と快適性確保に関する調査研究班による考察
原因不明のチアノーゼや気道閉塞などの事例は分娩直後のKC導入後年数に関係なく、また実施時間に関係なく、医療スタッフが離れずに常時付き添っていても発症していた。このことは分娩直後のKCでは、原因不明のチアノーゼや気道閉塞などの事例は起こりうることを示している。これらの事例がKCと関連しているかどうかについては今後の検討が必要である。
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■久保田(産科医・麻酔科標榜医)によるカンガルーケアの危険性に関する考察
57例の内訳を見ると、なぜか肺高血圧症の診断名が一例も無い。しかし、A呼吸障害・無呼吸(14例)、B原因不明のチアノーゼ(9例)、C不明(12例)、計35例のほとんどは、新生児肺高血圧症の病態、それに類似した事例と考えられる。また、@気道閉塞・窒息(10例)の内訳は、明らかな「うつぶせ寝」による窒息が6例、うつぶせ寝による窒息が疑われる事例が2例、羊水・粘液が気道閉塞を招いた事例が2例であった。うつぶせ寝での授乳は、窒息事故はいつでも起こりうる事を物語っている。低体温(2例)・低血糖(2例)の事例が計4例ある。カンガルーケアには体温上昇作用・血糖値の安定があると報告されているが、カンガルーケアには体温上昇作用・血糖値の安定が無い事を示唆している。元気に生れた正常成熟新生児であっても、体温管理(低体温の予防)と栄養管理(低血糖の予防)を怠ってはならない事を意味する事例である。F転落しそうになった事例が2例ある。母親が寝込んでしまい、児の管理が出来なくなった為と考えられる。睡眠をとるべき深夜の時間帯、母子同室での長時間のカンガルーケア、鎮静・鎮痛剤を打たれた術後患者にカンガルーケアを行うべきではない。G先天異常の6例は、カンガルーケアを行うべきでなかった。

<マトメ>
57例の事例から、カンガルーケア中の事故は原因不明ではなく、肺高血圧症による呼吸障害、うつぶせ寝による窒息事故が最も多いと考えられた。肺高血圧症、あるいはそれに類似した事例が多発している事から、体温管理(保温)を怠った為と考えられた。また出生直後のカンガルーケアに体温上昇作用は無いと考えた。術後患者はもちろん、分娩後の疲労困憊した母親に長時間の児の全身管理は難しいと判断した。国は57例の事例を国民に報告し、厚労省の「授乳と離乳の支援ガイド」を早急に見直すべきである。
久保田史郎

<カンガルーケアを推進する渡部医師の意見>
渡部医師(倉敷中央病院小児科)もカンガルーケアの危険性について、周産期シンポジウム2010年(No.28)に次の様に報告している。
渡部論文引用:生直後は胎内から胎外へのダイナミックな環境の変化に曝され、一生のうちで最も不安定な時期である。低体温、低血糖、低酸素などの誘因で容易に肺高血圧症が惹起される。カンガルーケアは非常に呼吸・循環が不安定な時期に行われるケアであることを、周産期医療関係者は留意する必要がある。全国アンケートでは、カンガルーケアの急変例は全例正期産児であった、と報告した。以上、引用終り。つまり、未熟児に急変例の報告が無い理由は、未熟児では体温管理(保温)と栄養管理(低血糖の予防)が積極的に行われ、寒い分娩室でのカンガルーケア(うつぶせ寝)を行わないからである。渡部医師は未熟児に事故例が無い事を強調し、出生直後の体温管理(温めるケア)・栄養管理の重要性を訴えているのである。