第2章 冷え性を科学する

1. 妊婦から学んだ冷え性の科学とは
西洋医学では冷え性は病気ではありませんので冷えの定義がなく、冷え性に関する医学的研究は全く進んでいません。だから東洋医学の漢方なのです。現代医学は冷え性の “危険性” を見落としています。私は冷え性の本態は下肢の末梢血管が持続的に収縮した状態、つまり下肢の血流が滞った状態と考えています(図5・図12)。冷え性は低体温症と異なり、中枢深部体温は正常で、下肢の末梢深部体温だけが異常に冷たくなった状態と考えています。冷え症は、下肢に温かい血流が少なくなっている状態と考えて下さい。冷え症(持続的な末梢血管収縮)が慢性化すると手足の末梢組織だけでなく、全身臓器に血流障害を招き、組織が変性(酸化)し、臓器の働きに異常を来します。その慢性的な冷え性が病気(生活習慣病)を引き起こすのです。

恒温動物である人間は不快(寒い・暑い)な環境温度に遭遇しても自律神経系の体温調節機構(放熱機構+産熱機構)によって、体温を一定の37℃に維持しようと働きます。現代医学は体温が37℃に一定に保たれていれば正常(恒温状態)と考えていますが、ネットで恒温(状態)を調べると、「温度が一定であること」としか書かれていません。恒温状態とは、それだけでは不十分です。体温が37℃で一定であっても、環境温度によっては冷え性や熱中症(うつ熱)で事故が実際に起こっているからです。私は、恒温(状態)について、以下の様に考えています。

■恒温状態とは
「体温が一定であること」だけでは恒温(状態)とは言えません。何故ならば、体温が37℃で一定であっても、人間が健康な状態にあるとは限らないからです。例えば、出生直後の赤ちゃんの様に体温が37℃に一定であっても、下肢の末梢深部体温は異常に冷たく30℃以下になっている場合があるからです。その様な冷え性の場合は、末梢血管は持続的に収縮したままで交感神経優位(アドレナリンON)の状態になっています。冷え性とは反対に、猛暑時に起きる熱中症(うつ熱)・睡眠中の赤ちゃんに衣服を着せ過ぎた時に起こる乳幼児突然死症候群(SIDS)・冬場の風呂の中でおきる高齢者の溺死などでは、下肢の末梢血管は持続的に拡張したままで下肢の体温は直腸温度と同じ37℃位にまで上昇し、副交感神経優位の状態(アドレナリンOFF)が続き、いつ心肺停止(突然死)が起こっても不思議ではないからです。赤ちゃんに冷え性(末梢血管収縮=アドレナリンON)や熱中症(末梢血管拡張=アドレナリンOFF)による心肺停止事故が多いのは、環境温度によってアドレナリンON、アドレナリンOFFのどちらか一方だけが呼吸循環器に作用しているからです。

現代医学は体温が37℃に一定であれば恒温と見なしていますが、私は、体温が37℃で、下肢の末梢血管が「収縮」と「拡張」のリズミカルな体温変動、つまりアドレナリンのON/OFFを繰り返している時が恒温状態と考えています(図5)。病気や事故は、自律神経系(交感神経・副交感神経)のバランスが一方だけに片寄った時に発生するからです。自律神経系の片寄りの程度が軽度であれば自律神経失調症で済まされますが、重度になった時、突然死が待ち受けているのです。赤ちゃんや高齢者を事故から守る為には寒過ぎ・暑過ぎに注意し、恒温状態を維持するための快適な環境温度を準備する必要があるのです。冷え性について、もう少し詳しく説明しましょう。

2. 冷え性は、排水管(静脈系)のトラブル
人間の体を建物に例えると、人間も建物も2種類のパイプが走っています。人間の体には血液を運搬する動脈と静脈の2本のパイプ(血管)があります。家庭の台所には、きれいな水が出る給水管(動脈)と、汚れた水を外部に出す排水管(静脈)の二つの管があります。私は、冷え性は給水管(動脈)ではなく、排水管(静脈)の流れが悪くなった状態と考えています。つまり、台所の排水管(流し)に物が詰まって流れが悪くなったのと同じように、冷え性は下肢(静脈)の血管が細くなり、下肢から心臓に戻る「静脈還流量」が減少した状態と考えています。

心臓に戻る静脈還流量が減少するのは冷え性だけではなく、長時間のデスクワークがあります。長時間のデスクワークは、まさに機内のエコノミー症候群そのものです。長時間のフライトで足が浮腫み、具合が悪くなることがあります。そのために機内を歩いたり、屈伸運動をしたり、ふくらはぎをマッサージしたりすると気持ちが良くなります。それは、下肢から心臓に戻る静脈還流量が増え、全身臓器の血流が良くなるからです。同様に、会社で長時間のデスクワークをする時には椅子から立ち上がり、足踏みをし、ふくらはぎをマッサージすると静脈還流量が増え、全身の臓器に血流を増やす効果があります。特に、お腹が大きい妊婦さんは長時間のデスクワークに注意してください。夕方、足が浮腫みだしたら仕事を中止し、早めに退社、自宅で温かいお風呂の中で足をマッサージしてください。足の浮腫みを放置し、仕事をし続けると子宮が収縮、早産や胎盤早期剥離、さらに妊娠高血圧症を引き起こす危険性が高まります。この時は、お腹の張りだけではなく、頭痛・肩こり・便秘などの症状も出ている筈です。

3.「静脈還流量」の減少が病気をつくる
下肢から心臓に戻る静脈血流を「静脈還流」と言います。静脈還流は心臓が「拡張」するときの力(陰圧)と下肢の筋肉を動かすポンプによって下肢から心臓(右心房)に引き戻されます。下肢には「第2の心臓」と呼ばれる筋肉でできた補助ポンプ(腓腹筋=ふくらはぎ)がついています。しかし、腹部臓器(腸・肝臓・腎臓・膵臓・子宮など)には静脈血を心臓に戻すポンプはついていません。では、腹部臓器から出た静脈血はどの様なメカニズムで心臓に戻るのでしょうか。このメカニズムが分かれば、「冷え性」と「長時間のデスカクワーク」が人間(二本足動物)にとって如何に不利益(非生理的)であるかが分かっていただける筈です。

― ここが大事 ー
腹部臓器(腸・肝臓・腎臓・膵臓・子宮、など)を出た静脈血は、下肢から心臓に戻る静脈還流に引っ張られて心臓に戻ります(図6)。病気を防ぎ健康を維持するためには、腹部臓器の血流を良くしていなければなりません。それには日頃から、下肢から心臓に戻る静脈還流を増やす工夫を日常生活に取り入れることが大事です。タバコ・睡眠不足・長時間のデスクワーク・運動不足・低温環境などは末梢血管を収縮させ、静脈還流を減らすため健康に良くありません。しかし、生活習慣を見直し、タバコを止め、睡眠・適度な運動(散歩)・温泉、特に水の力(水圧+浮力)を応用した温水プールでの水中散歩は静脈還流を増やす効果に優れ、全身臓器を循環する血流は見違える様に改善され、自然治癒力を高め、再び元気を取り戻します。水中散歩は、とくにお腹の大きい妊婦さんに著しい効果をもたらします(図7)。

4.臓器の「循環血流量の減少」が病気の本態
心臓と腹部臓器(消化管・肝臓・腎臓・膵臓・子宮・卵管など)との間を循環する血流量が慢性的に減少すると、それらの臓器は血流障害によって組織に変性を来し、それが引き金となって病気をつくります。心臓(左心室)から出た動脈血と心臓(右心房)に戻る静脈還流量が等しければ全ての臓器に血流障害は起きないのですが、冷え性の人は下肢から心臓へ戻る静脈還流量が少ないために、本来心臓に戻るべき静脈血が臓器や静脈側の血管内に貯留(プーリング)されます。子宮内の胎盤を超音波で観察すると、胎盤の血管怒張(図8)・胎盤出血(図9・図10)・うっ血像(図11)などの異常所見がしばしば観察されます。同様の現象が、脳・腸・肝臓・腎臓などにも起こっても不思議ではありません。当然、同じ現象が起こっていると考えるべきです。

超音波で胎盤を観察すると、妊婦さんの生活習慣が良いかどうかが見えてきます。水中散歩に参加されている妊婦さんの胎盤には出血像・うっ血像はみられません。例え、胎盤に異常があっても、水中散歩で静脈還流量が増える事よって、子宮胎盤を循環する血流量が増え胎盤の血腫や浮腫などの異常が姿を消したのです(図8〜図11)。冷え性の妊婦さんに頭痛、肩こり、便秘、浮腫などの不快な症状が体の広範囲にわたる理由は、静脈還流の減少が全ての臓器に血流障害を引き起こしているからです。事実、それらの不快な症状は、水中散歩(静脈還流の増加)によって、どの症状も見事に改善されます。私は、水中散歩に参加された約10、000人の妊婦さんから、冷え性は「万病の元」であることを教えて頂きました。

5.長時間のデスクワークは、機内のエコノミー症候群と同じ
2本足の人間が朝から夜までパソコンに向い休憩なしで仕事をすると、下肢から心臓に戻る「静脈還流」の流れが悪くなり、そのために心臓から下方に位置する腹部臓器(腸・肝臓・腎臓・子宮・卵管など)の循環血流量が減少します。夕方になると足が浮腫むのはそのためです。妊婦さんのお腹(子宮)が硬くなり、子宮内の赤ちゃんの動き(胎動)が弱くなるのも夕方の場合が多いです。胎動が少なくなる理由は、長時間のデスクワークで子宮胎盤血流量が減少し、胎児に運搬される酸素・栄養が減少するからです。 長時間のデスクワークで下肢から心臓に戻る静脈還流量が減少すると下肢に浮腫が出てきます。長時間のデスクワークは、まさに機内の「エコノミー症候群」そのものです。下肢の浮腫は病気の前兆と考え、とくに妊婦さんは浮腫をとるための生活習慣(十分な睡眠・お風呂・適度の散歩)を取り入れ、改善しておきましょう。男性でも下肢に浮腫が出てきたら高血圧に注意されて下さい。足が浮腫むと尿量が減り、血圧が上昇する事が分っているからです。十分な睡眠と適度の運動(散歩)で、浮腫みが取れる筈です。それでも浮腫が取れなければ水中散歩をはじめて下さい。尿量が増え、血圧は見事に下がり始めます。水中散歩は高血圧症や脳梗塞などの予防と治療に目覚ましい効果を発揮します。一か月後には、驚くほどの改善がみられる筈です。実は、私も週に2回〜3回、水中散歩に行っています。騙されたと思って、皆様も水中散歩をはじめて下さい。妊婦さんだけでなく、高齢者にとっても、元気で、若返りの秘訣は水中散歩だと思っています。

6.体温調節の仕組み(重要)
人間は、いかなる環境温度の変化(寒い・暑い)に遭遇しても、体温を37℃に安定さ
せる機能を持っています。その体温調節には自律神経系(交感神経/副交感神経)
が働き、寒い時には末梢血管を収縮(放熱抑制)、暑い時には拡張(放熱促進)によって、つまり体温調節は末梢血管の収縮(アドレナリンON)と拡張(アドレナリンOFF)によって体温調節を行っています。寒い時に鳥肌が立ち、暑い時に汗がでるのは自律神経の働きによるものです(図12)。自律神経は体温調節もしますが、同時に呼吸循環・消化管など全ての臓器の調節も行っています。人間の体温(中枢)は37℃と一定ですが、下肢の末梢深部体温(足底部)は環境温度(寒い・暑い)によって、下降(血管収縮)と上昇(血管拡張)を繰り返しながら体温調節を行っているのです。

人間の体温調節は末梢血管の収縮(放熱抑制)と拡張(放熱促進)、つまりアドレナリンのON/OFFによって調整されています。生まれたばかりの赤ちゃんは体温調節が未熟と言われますが、実際は出生直後からアドレナリンON/OFFで体温を微調整する能力を有しています。新生児の体温調節の研究で分かった事は、人間は末梢血管(下肢)のリズミカルな体温変動(収縮と拡張)を繰りかえしている時が最も安全で、健康な状態です(図5)。冷え症の人は体温が37℃で正常であっても、足の体温は冷たく、末梢血管は持続的に収縮したままです。アドレナリン 「ON」の状態(交感神経優位)が持続すれば、全ての臓器は疲れて危険信号を発します。そのサインが頭痛・肩こり・便秘・浮腫・疲れ易いなどの症状です。この様な不快な症状がある時は、病気の前兆です。睡眠をしっかりとると、それらの不快な症状は改善されます。睡眠にはアドレナリン「OFF」の末梢血管拡張作用があるからです。睡眠を十分にとる事によって全身臓器の血流障害は改善され頭痛・肩こりがとれるのです。睡眠不足になると頭痛・肩こり・便秘などの症状が出るのは末梢血管拡張作用、つまりアドレナリン「OFF」の時間帯が少なくなるからです。人間は末梢血管が「収縮」と「拡張」のリズミカルな体温変動を繰り返していれば病気・事故を防げるのですが、冷え症、つまり末梢血管が持続的に収縮したまま放置すると、もともと正常であった臓器は血流障害によって機能障害(病気)へと進行するのです。

7.心臓の役割
心臓は収縮することによって動脈血を全身に送り出す仕事と、心臓が拡張するときの力(陰圧)で静脈血を心臓に引き戻す二つの作業を同時に行っています。すなわち、肺で酸素化された動脈血は心臓の「収縮」によって心臓(左心室)から大動脈に駆出され、脳や消化管・肝臓・腎臓・子宮などの腹部臓器・筋肉・骨などに酸素・栄養を運搬します。腹部臓器や筋肉などに酸素を運搬した血液は静脈血となって再び心臓(右心房)に戻ります。しかし、腹部臓器には静脈血を心臓に戻すためのポンプはついていません。冷え性の人に便秘・頭痛・肩こり・浮腫などの不快な症状が多い理由は、下肢から心臓に戻る静脈還流量が減少しているために、腸・肝臓・腎臓・子宮・脳・下肢に行った血液の心臓への戻りが悪くなっているからです。水中散歩の水の力(水圧+浮力+運動)で静脈還流量を増やすと、その不快な症状は劇的に改善されるのです(図6)。

―妊婦さんの長時間のデスクワークは胎児を苦しめるー
現代社会は妊婦さんを朝から夜遅くまで椅子に座らせ、子宮内の胎児が苦しんでいるのも知らずに残業させています。朝からの長時間のデスクワークは、下肢から心臓に戻る静脈還流を減少させ、頭痛・肩こり・便秘・浮腫などの不快な症状をつくり出し、同時に妊娠高血圧症・胎盤早期剥離・早産など、低出生体重児を増やす要因をつくり出しているのです。妊婦さんを夜遅くまで、椅子に座ったまま連続的に仕事をさせる事は、母親以上に子宮内の胎児を苦しめています。妊婦さんの労働時間・仕事内容を見直さなければ、低出生体重児は今後もさらに増え続けるでしょう。子宮内の胎児のためにパソコンを離れ、時々足踏みをして下さい。会社に自転車こぎがあったら、足を動かすことによって子宮胎盤血流が良くなり、胎児は喜んで動き出すでしょう。下肢から心臓に戻る静脈還流量の増加、それが人間の持つ「自然治癒力」を助け、病気を防ぎ、病気を治すのです。

8.睡眠不足と長時間の「デスクワーク」に注意
心臓の拡張期の力を手助けする補助ポンプを「第2の心臓」と呼びます。下肢の筋肉(ふくらはぎ)を動かす事によって補助ポンプが働き、静脈血を下肢から心臓に押し上げ、心臓の負担を軽くします。しかし、長時間のデスクワークでは足を殆ど動かしませんので、この「第2の心臓」はあっても役に立ちません。これが、所謂、機内の「エコノミー症候群」なのです。
睡眠中、ベッドに寝た状態(水平位)では重力がかかりませんので補助ポンプを使わなくても血液は下肢から心臓にスムーズに引き戻されます。だから睡眠を十分にとると、疲れ、頭痛、肩こり、浮腫がとれるのです。ところが、長時間椅子に座ったままデスクワークをすると補助ポンプは作動しないため下肢から心臓に戻る静脈還流量が減り、静脈側に血液が貯留します。午前中は足に浮腫は出ませんが、夕方になると浮腫が強くなるのは静脈還流の減少によるものです。冷え性は結婚前・妊娠前に治しておきましょう。冷え性は、不妊症・流産・早産・妊娠高血圧症などの原因になるからです。妊娠前に下肢の筋肉を鍛え、第2の心臓(ふくらはぎ)の働きを助けるために適度の運動をされ筋肉量を増やしておきましょう。足が細いのがきれい、それは昔の話です。やせ過ぎは、子宮内の赤ちゃんの発育に良くありません。元気な赤ちゃんを産むためにも結婚前に足の筋肉を鍛え、冷え症を治しておくことが大事です。

9.冷え症と不妊症との関係
冷え性は妊娠中の病気だけでなく、妊娠前の不妊症(卵管性因子)・産後の母乳育児にも影響すると考えます。妊娠前に冷え症をそのまま放置しておくと子宮卵管血流量が減少し、卵管の動き(蠕動運動)が悪くなり不妊症(卵管性因子)の原因になる可能性があります。冷え性はすべての臓器の血流を減少させ、それらの臓器に機能障害を与えるからです。妊娠するためには卵巣から出た卵子を卵管采に吸い込ませ、受精卵を子宮内に運ばなければなりません。卵巣から出た卵子を卵管采に吸い込ませるためには、卵管の蠕動運動(繊毛運動)によって生じる力(陰圧)によって行われていると考えられるからです。この事は消化管の蠕動運動の働きと似ています。

冷え性で消化管血流量が減少すると蠕動運動が少なくなり、赤ちゃんが糖水を飲んでも胃袋に入った水を腸管内に吸い込ませることが出来なくなり、糖水は胃袋の中に留まったままです。胃袋の中の水を腸管に移動させるためには、腸の蠕動運動によって胃内の水を腸管内に吸い込ませる吸引力が必要です。冷え性の赤ちゃんに初期嘔吐が多いのは消化管の血流量が少なく、腸管の蠕動運動が弱くなり、胃袋に入った糖水は腸管内に吸い込まれず、糖水は胃袋の中に留まったままだからです。つまり、赤ちゃんの胃袋は糖水で満タンのため、飲んでも嘔吐するのです。出生直後の赤ちゃんを保育器(34℃)に入れ冷え性を予防すると、赤ちゃんは食欲(吸綴反射)が出て、嘔吐せず、ぐいぐいと糖水を飲みはじめます。同様に、卵子を卵管に吸い込ませるためには、卵管の蠕動運動が重要な役割を果たしていると考えられます。卵管があっても、機能(蠕動運動)しなければ妊娠に至りません。腸があっても消化管の動き(蠕動運動)が悪ければ、ただの管で、便秘や腸閉塞を起こします。冷え症を治すことによって消化管の血流量を増やし、腸の蠕動運動を正常に戻せば、どの赤ちゃんも食欲が出てきて、便秘が治ります。
腸の動き(蠕動運動)が悪いと便秘や腸閉塞になるのと同様に、卵管の動き(蠕動運動)が悪いと卵管閉塞が起こって不妊症になるのは予測される事です。腸閉塞はおなかが痛みますので、すぐ病院に行きますが、卵管が閉塞しても痛みを感じないため治療が遅れ、卵管が詰まってしまい不妊症になると考えられます。卵管閉塞を防ぐためには卵管の蠕動運動が正常に機能するために、体温を恒温状態(アドレナリンのON/OFF)に維持していなければなりません。冷え性を放置すると卵管の動きが悪くなり、長期化すれば卵管が癒着して卵管閉塞を起こすと考えられます。冷え性の方に不妊症が多い理由は、卵管の蠕動運動が正常に機能していないからと考えます。

一般に、卵管閉塞は炎症によって引き起こされると考えられていますが、私は卵管閉塞の一因として、冷え性が悪そうしているのではないかと考えています。冷え性の人に便秘と不妊症(卵管性因子)が多い理由は、消化管と卵管の動き(蠕動運動)が冷え症とリンクしているからと思われます。腸の動き(蠕動運動)が悪い人は便秘や腸閉塞を、卵管の動きが悪い人は卵管閉塞を引き起こし不妊症になると考えています。不妊症の治療をされている人は、妊娠率をアップするためにも冷え性を治す努力をされてください。

―ワンポイント レッスンー
冷え性の方はお風呂にゆっくり入り、「ふくらはぎ」をマッサージしてください。寝る時は「うつ伏せ寝」で休んで下さい(図40)。「うつ伏せ寝」で寝ると下肢の血管が開き、足の末梢深部体温が上昇し、冷え性が良くなり、腸や卵管の血流が改善し蠕動運動が活発になると考えられるからです。冷え症が強くなる寒い冬は、温かい食事・お風呂で体を温めるだけでなく、着こんで散歩しましょう。運動後は体温が上がり、足の血管が自然に開き、静脈還流量は増えてきます。冷え性の根本的な治療は自分の温かい血液(37℃)で治すのが一番です。不妊症(卵管性因子)の方にも水中散歩をお勧めします。理由は、水中散歩をすると腸の血流が良くなり蠕動運動が増し便秘が改善するからです。腸が動き出すのと同様に、卵管も活発に動き出し本来の生殖機能を取り戻すことが期待されるからです。また冷え症を改善する事によって乳房の血流も増し、産後の母乳分泌も良くなることが期待されます。頑固な便秘や下痢で悩んでおられる方も水中散歩を是非 お試し下さい。全ての病気の予防・治療は臓器の血流を改善することから始まります。一般に、冷え性の方は母乳の出が悪いと言われますが、乳房を循環する血流量が少ないのかも知れません。お風呂に入るとお乳が飛び出る事が知られていますが、母乳の出を良くするためにもお風呂で体温をあげ手足の末梢血管を開く事は、母乳分泌を促す効果があると考えています。

10.冷え性を改善する事が、予防医学の始まり
人間は、末梢血管の収縮と拡張の周期的な変動のある時が健康で、末梢血管の「持続的な収縮」、「持続的な拡張」の時に病気・事故が起きています(図5)。末梢血管の「持続的な収縮」の事故・病気の例が、寒い分娩室におけるカンガルーケア(早期母子接触)中の心肺停止事故・発達障害児の増加です。「持続的な拡張」の事故例が、着せ過ぎた時の乳幼児突然死症候群(衣服内熱中症)、猛暑時の屋内熱中症、お風呂での溺死(熱中症)などです。前者が冷え症(持続的な末梢血管収縮)、後者がうつ熱(持続的な末梢血管拡張)が原因です(図12)。「低体温」と「高体温」、とくに高体温(発熱)に関する医学研究はたくさんありますが、「冷え性」と「うつ熱」に関する研究は殆どありません。私は40年間、不快(寒い・暑い)な環境温度が下肢(足底部)の末梢深部体温にどの様な影響を及ぼすのかについて研究してきましたが、病気の多くは、冷え性、つまり持続的な末梢血管収縮(静脈還流量の減少)が引き金になっていると考えています。