第8章 発達障害・児童虐待を防ぐために

■予測していた発達障害の増加
日本で完全母乳が普及すると低血糖症の赤ちゃんが増え、将来、原因不明の脳障害児が増えることを予測していた私は、開業して間もなく、福岡市立こども病院新生児科グループに福岡市の脳障害(発達障害)の年次推移の作成をお願いしていました。現在、福岡市の障害種別の年次推移の詳しい資料が平成元年からあるのは、私が発達障害児の増加を予測し、年次推移の作成をお願いしていたからと思われます。

また私は、日本で完全母乳が普及すると飢餓(栄養不足+脱水)で重症黄疸の赤ちゃんが増える事を予測し、出生0日から退院までの毎日の体重と、黄疸が最も強く出る生後4日目の黄疸(ビリルビン値)の検査を行い、助産録にすべての記録を残し、パソコンに入力してきました。出生初日から退院までの5日間、同一施設で1万人以上の新生児の体重を毎日計ったデータは国内では勿論、世界でもないと思われます。私は1996年に『新生児早期の体温管理がその後の適応現象に及ぼす影響について』の演題名で、当院で出生した5083人(1986年〜1995年)の新生児の体重発育と重症黄疸の関係を発表するために第49回日本産科婦人科学会に応募しました。ところが、理事会からの返事は驚く事に不採用のハガキでした。自信を以って応募した学会発表を、何故、学会側が不採用にしたのか不審に思った私は、その不採用のハガキを今も大事に保管しています。

発達障害の増加を危惧していた私は、低血糖症を防ぐためには久保田式の出生直後の体温管理(保温)と生後1時間目からの超早期混合栄養法(母乳+人工ミルク)が重要と考え、低血糖と重症黄疸の予防策を日本産科婦人科学会九州連合地方部会(1997年)、翌年には、日本新生児学会(1998年)で発表しました。新生児学会での私の発表に対して、某大学新生児科T教授は『赤ちゃんは水筒と弁当を持って生まれてくると言われているので、そんなに早く人工乳を飲ませる必要はない。』の反論の一言でした。当時は、助産師だけでなく、新生児科の教授までもが、赤ちゃんは『3日分の水筒と弁当』を持って生まれてくると云う俗説に汚染されていたのです。

2007年 厚労省が「授乳と離乳の支援ガイド」を発表する1年前、私は同委員会に福岡市の発達障害に関する資料を送り、完全母乳とカンガルーケアの危険性(低血糖症⇒発達障害)を強く訴えました。しかし、一開業医の私の意見は無視され、母乳育児の3点セット(カンガルーケア+完全母乳+母子同室)が日本のお産の常識になったのです。私は、原因不明の脳障害(発達障害)は低血糖症が原因と開業前から予測していた通り、福岡市では1993年の完全母乳推進運動の3年後から、さらにカンガルーケアが2007年に導入された時期に一致して発達障害が驚異的な勢いで増加していました(図21)。特に、冷え性を促進するカンガルーケアの導入時期に一致して発達障害が急激に増え出したことから、発達障害は「低血糖症」が原因と確信しました。分娩前に診断がつかない高インスリン血症児(6人に1人)(図22)を出生直後に寒い分娩室で冷え性に陥らせ、その冷え性の赤ちゃんを今度は完全母乳で飢餓に陥らせると、「高インスリン血症+冷え性+飢餓」⇒「低血糖症↑」⇒「発達障害↑」の方程式が成立します(図23)。

寒い分娩室での出生直後からのカンガルーケアと母乳が出ていない時期(生後3日間)の完全母乳を厚労省がこれからも推進し続けるならば、日本の赤ちゃんは6人に1人が発達障害になると予測します。カンガルーケアが導入されて発達障害が驚異的に増えたのは、出生直後の体温管理(保温)を怠り、冷え性(持続的な末梢血管収縮)の赤ちゃんを増やしたからです。私が開業と同時に、新生児の体重と黄疸の検査を行い、そのデータをパソコンに入力してきたのは、日本で完全母乳が普及すると、赤ちゃんは飢餓状態(低栄養+脱水)に陥り、低血糖症・重症黄疸・脱水の赤ちゃんが増え、原因不明の障害児が増える事を予測していたからです。私の予測が現実となり、今も日本で発達障害が増え続けているのです。厚労省は、出生直後の赤ちゃんを冷え性(持続的な末梢血管収縮)に陥らせるカンガルーケア(早期母子接触)と完全母乳を今すぐ止めさせるべきです。この事は、2015年3月12日に自由民主党本部で行われた障害児者問題調査会(衛藤 晟一会長)に私は招聘され、『高インスリン血症児を完全母乳とカンガルーケアで管理すると低血糖症は避けられない』の趣旨を講演、行き過ぎた完全母乳とカンガルーケアに警鐘を鳴らしてきました。それでも、完全母乳とカンガルーケア(早期母子接触)は見直されることなく、とくに厚労省が後援する「赤ちゃんに優しい病院」では完全母乳とカンガルーケアが現在も当然の様に行われているのです。だから、カンガルーケア中の心肺停止事故(脳性麻痺=医療的ケア児)は赤ちゃんに優しい病院(BFH)に多発しているのです。九州では5件中、4件がBFHで起こっていました。

■発達障害と児童虐待の増加との関係
日本では発達障害児の増加に伴い、児童虐待が驚異的に増えています。平成28年8月4日の『児童虐待10万件超す 15年度、25年連続増加』の報道、とくに児童虐待の年次推移は、発達障害の研究(原因究明・予防策)を周産期側から長年やってきた私にとって衝撃的なニュースでした。何故ならば、発達障害と児童虐待は、日本で母乳育児推進運動(完全母乳・カンガルーケア)が始まった時期に一致して驚異的に増えていたからです(図21)・(図27)。発達障害と児童虐待は母乳育児推進運動がスタートして数年後から増え始め、それ以前には社会問題になっていなかったことから推察すると、昨今の児童虐待の急激な増加は発達障害児の増加によって惹起されたと考えられます。では、発達障害はカンガルーケア・完全母乳哺育がスタートしてから、なぜ急激に増え出したのでしょうか。

私は、日本の寒い分娩室(約25℃)での出生直後からの『カンガルーケア』と母乳が出ていない時の『完全母乳』が新生児を低体温症と飢餓(低栄養+脱水)に陥らせ、脳に障害を遺す新生児低血糖症(文献12)・重症黄疸(文献13)・高Na血症性脱水(文献14)などを引き起こしたことが発達障害を増やした一番の要因と考えています。何故ならば、NICU(新生児集中治療室)で管理された低出生体重児(2500g以下)には発達障害は増えていないからです。NICUでは低出生体重児の体温管理(冷え性の予防)と栄養管理(低血糖・飢餓の予防)が科学的根拠に基づいて厳重に行われているからです。私は、1983年の開業以来、当院で出生した約15、000人の早期新生児(生後1週間)の体重発育曲線と重症黄疸の発症率に関する臨床研究から、日本産婦人科医会などが推奨する現行の寒い分娩室におけるカンガルーケア(早期母子接触)と母乳が出ていないときの完全母乳を見直せば、発達障害は激減すると考えています。事実、完全母乳とカンガルーケアを行っていない久保田産婦人科麻酔科医院では、発達障害児が少ないことが福岡市こども病院の調べで分かっているからです。厚労省と医学会が母子の『愛着形成』と『母乳育児』を目的に推奨した「カンガルーケア」と「完全母乳哺育」は、児童虐待防止法の定義によれば『ネグレクト』に相当します。その理由は、母乳が出ていない時(生後数日間)の完全母乳は『子どもの心身の正常な発達を妨げる著しい減食に相当』し、出生直後からのカンガルーケアは『寒い部屋での長時間の放置』に相当するからです。

1.発達障害・児童虐待を防ぐために
(1)発達障害は児童虐待のリスク・ファクター
発達障害は日本で母乳育児推進運動が始まって数年後から急激に増え出していたことから推察すると、完全母乳哺育(1993年)とカンガルーケア(2007年)の導入によって引き起こされた可能性が極めて高いと言わざるを得ません(図21)。それが事実ならば、完全母乳とカンガルーケア(早期母子接触)が日本のお産の常識である限り、発達障害は増え続け、その増加速度に連動して児童虐待も増えると予測します(図27)。発達障害は児童虐待のリスク・ファクターと考えられていることから、発達障害の増加に歯止めを掛けなければなりません。しかし、発達障害の原因解明・予防策に関する周産期側からの調査研究は全く行われていません。

(2)発達障害は低出生体重児よりも、2500g以上の正期産児に多い
日本の周産期医療は世界でトップクラスと報じられていますが、実際は、完全母乳哺育で育った赤ちゃんを飢餓(低栄養+脱水)に陥らせ、新生児の栄養状態を世界一悪くする国であることを、国民の皆様も知っていなければなりません。日本の赤ちゃんが飢餓(低栄養+脱水)に陥る理由は、日本産婦人科医会・助産師会などが、正常新生児(2500g以上)の出生直後の赤ちゃんの体温管理(冷え性の予防)と母乳が出ていないときの栄養管理(飢餓の予防)の重要性を無視し、新生児が出生直後に低体温症に陥っても、体重が著しく減少しても、それらを生理的現象と安易に考え、新生児管理の基本である体温管理(冷え症の予防)と栄養管理(飢餓の予防)を怠っているからです。
NICUに入院する「低出生体重児」の体温管理と栄養管理は、新生児科医の管理下で厳重に行われますが、産科病棟で管理する正期産児(2500g以上)に対しては、出生直後の体温下降と母乳が出ていない時の飢餓に対する予防は殆んど行われていません。正常新生児に発達障害が増える理由は、産科医・助産師が出生直後の低温環境(寒い分娩室)が引き金となって発症する新生児肺高血圧症(チアノーゼ)・初期嘔吐・低血糖症など、母乳が滲む程度しか出ない生後数日間の飢餓で発症する重症黄疸・高Na血症性脱水などを防ごうとする考えが無いからです。低出生体重児には発達障害児が増えないと報告がありますが、NICUでは体温管理・栄養管理が科学的根拠に基づいて厳重に行われているからです。つまり、正常新生児に対しても低出生体重児の管理と同様に体温管理・栄養管理を厳重に行えば、低血糖症・重症黄疸・脱水などによる発達障害を防ぐ事が出来るのです。

(3)日本の赤ちゃんは「寒さ」と「飢え」の犠牲に!
日本の寒い分娩室(平均25℃)に生まれてきた赤ちゃん、完全母乳を積極的に行う分娩施設で生まれた赤ちゃんは、出生初日から「寒さ」と「飢え」という一種の『虐待』に遭っています。わが国で発達障害が驚異的に増えた理由は、生後間もない赤ちゃんにとって最も危険な「寒さ」と「飢え」の予防を怠ったからと考えられます。発達障害児の驚異的な増加、そしてカンガルーケア中の心肺停止事故(医療的ケア児の増加)は、出生直後の寒冷刺激(胎内38℃と胎外25℃の環境温度差)と生後数日間の飢餓(著しい体重減少)を予防しなかった病院側の新生児管理に落ち度があったと考えざるを得ません。
当院では1983年の開業以来、発達障害の危険因子である新生児低血糖症・重症黄疸・高Na血症性脱水症・頭蓋内出血を防ぐことを目的に、生後2時間の保温(保育器内収容)と生後1時間目からの超早期混合栄養法を積極的に行ってきました(図26)。私は、出生直後の赤ちゃんの「低体温症」と生後3日間の「飢餓」が、低血糖症・重症黄疸の赤ちゃんを増やすと、1983年の開業当初から予測していました。現代産科学は発達障害児が増え続けているにも関わらず、いまだに出生直後からのカンガルーケアと完全母乳哺育を止めようとしません。国は現代産科学(ガイドライン)の間違いを根本的に見直さなければ、発達障害の増加に歯止めを掛けることが出来ません。発達障害防止策で最も有効な手段は、冷え性の原因となる出生直後からの寒い部屋(分娩室・母子同室)でのカンガルーケアと、母乳が出ていない生後3日間の完全母乳哺育を中止させることです。国民や報道は、助産師の口癖である、赤ちゃんは「3日分の水筒と弁当を持って生まれ来る」の言葉に翻弄されています。赤ちゃんは、この科学的根拠の無い無責任な言葉の犠牲に遭っているのです。

■発達障害は先天的な遺伝性疾患ではない
2016年4月、出生直後からのカンガルーケア(早期母子接触)と完全母乳を積極的に行っている A医院(福岡市)で生まれたこどもさんに発達障害児が集中しているという情報がA医院に通院中の妊婦B子さんから情報提供がありました。B子さんはご主人(外科医)に相談され、A医院から当院に転院されました。発達障害が先天性の脳障害(遺伝性疾患)であるならばA医院に集中し、当院に少ない筈がありません。A医院はカンガルーケアと完全母乳を積極的に行う病院です。

巷には、発達障害の原因は「先天的な脳障害」・「ワクチン説」・「愛情不足」・「育て方」・「低出生体重児の増加」・「高齢出産の増加」・「教育現場の問題」など、的外れの情報ばかりが目立ちますが、それらの説には科学的根拠がありません。私は、新生児の体温と栄養に関する研究から、出生直後の低温環境(冷え性)と母乳の出が悪い生後数日間の飢餓(低栄養+脱水)が原因不明の脳障害(発達障害)の元凶と考えています。私が、発達障害は先天的な脳障害ではないと考えた理由について、その根拠を以下に述べます。

(1) 福岡市の発達障害児の驚異的な増加(平成5年50人⇒平成26年802人)は、遺伝では説明できない(図21)
(2) 福岡市立こども病院小児神経科医師グループによる『発達障害の発生頻度に分娩施設間で差がある』の学会発表(日本小児神経学会 2008年)
(図28)
(3) 政令都市7市の療育センターにおける自閉症等広汎性発達症害の診断数は、札幌・川崎・千葉に少なく、京都・横浜・名古屋に極端に多い(7市へのアンケート調査、広島のHPから)(図29)。発達障害が遺伝ならば、都市間で発達障害の発生率に極端な違いが出る筈がありません。
(4) 2015年3月12日の障害児者問題調査会(自由民主党政務調査会)において、日本自閉症協会会長の山崎晃資医師(精神科医)は講演資料に、自閉性障害の原因は遺伝ではなく周生期障害をトップに挙げられた(図30)。
(5) 国立成育医療研究センター研究センターの藤原武男医師らは海外の論文を引用し、『低出生体重と自閉症のリスクの増加に関連は認められなかった』と報告(文献15)。(正常新生児には完全母乳とカンガルーケアを行うが、低出生体重児には体温管理(低体温の予防)と栄養管理(低血糖・飢餓の予防)を厳重に行う。出生体重と関係なく、新生児の体温管理と栄養管理を科学的根拠に基づいて行えば発達障害は防止出来る事を意味する。)
(6) 発達障害は、@肥満妊婦・A裕福な家庭(胎児の高インスリン血症が、新生児を低血糖に陥らせた)(文献16)
(7) 発達障害は、帝王切開で生まれた赤ちゃんに多い(文献17)
(術前の5%糖液の持続点滴が胎児を高インスリン血症にし、新生児を低血糖に陥らせた)
(8) 完全母乳栄養管理は新生児期に低血糖を来し易い(文献18)
(日本小児科学会雑誌110巻6号(2006年)
(9) 発達障害は重症黄疸の治療を行った児に多い(精神経 2009年(文献19)
(10) 体重減少10%以上の母乳栄養児の4割弱に高ナトリウム血症性脱水を認めた。トルコにおける6年間の調査で、入院を要する「高ナトリウム血症性脱水」を発症した母乳栄養児116人のうち、半数以上で1歳以降に何らかの発達障害を認めた(日本小児科学会雑誌114巻12(2010年)(文献11)

★上記(1〜10)に、発達障害は「先天的な脳障害」を予見させる項目は何一ありません。発達障害の原因解明は、遺伝学・脳生理学・精神科・小児科・公衆衛生学などで幅広く行われていますが、肝心の周産期側からの調査研究だけがなぜか抜け落ちています。厚労省が周産期側からの発達障害の調査研究を避けて通る理由は、厚労省が推奨する母乳育児の三点セット(完全母乳+カンガルーケア+母子同室)に、カンガルーケア中の心肺停止事故の原因(寒冷刺激⇒肺高血圧症⇒低酸素血症)と発達障害の危険因子(低血糖症・重症黄疸・脱水)が潜んでいるからではなかと思われます。

★分娩直後の体温下降(低体温症)を防ぐ目的で、新生児を生後2時間 保育器
(34℃⇒30℃)に入れ、母乳の出が悪い時期に新生児の飢餓(低栄養+脱水)を
防ぐために適切な食事(人工乳)を与える分娩施設(当院)では発達障害の発生率
が極めて少ない(ほとんど無い)という情報が市関係者(小児神経科医と障害児者
施設の市職員)からありました。出生当日から新生児に適切(基礎代謝量)な栄養
(人工ミルク)をあたえると、発達障害の危険因子(飢餓⇒低血糖・重症黄疸・脱水)
をほぼ100%防ぐことができます。出生時からの体重減少が著しいほど、発達障
害は増えると予測しています。出生直後の冷え性を防ぐ保温と母乳が殆ど出ない
生後3日間の飢餓(低栄養+脱水)を防ぐことが発達障害を防ぐ重要な鍵です。

■児童虐待を防ぐ為の周産期(産科)側からの提言
私は、1983年の開業以来34年間、早期新生児の低体温症・低血糖症・重症黄疸・飢餓(低栄養+脱水)を防ぐための先制医療(保温+超早期混合栄養法)を行い、原因不明の脳障害(発達障害)を防いできました(図26)。現在、日本で常識となった寒い分娩室でのカンガルーケア(早期母子接触)および母乳が出ない時期(生後3日間)の完全母乳は、児童虐待防止法の定義によれば、児童虐待のネグレクトに相当します。特に、「赤ちゃんに優しい病院」で生まれる赤ちゃんは、母乳が出ていないにもかかわらず適切な栄養(人工ミルク)を飲ませて貰えず、飢餓状態(低栄養+脱水)に陥っています。飢餓は、発達障害の危険因子である低血糖症・重症黄疸・高Na血症性脱水症を惹起します。日本で驚異的に増え続ける発達障害・児童虐待(ネグレクト)の増加に歯止めを掛ける為に、国(行政)は全ての新生児が、出生直後の体温管理(冷え性の予防)と母乳が出ない時期の栄養管理(低血糖・飢餓の予防)が適切に行われているかどうかの調査をされる事を要望します。私が、児童虐待を防ぐ為の周産期(産科)側から提言するのは、医療機関・医療従事者は児童虐待を発見したら児童相談所・市町村に通告義務があると義務付けられているからです。


発達障害・児童虐待防止策として7項目を提言
@ 産科医・助産師は、出生直後の低体温症と早期新生児の飢餓(低栄養+脱水)の防止に努める。(出生直後の低体温症と飢餓(著しい体重減少)は生理的現象ではない。)
A 母乳が出ていない時期には、完全母乳ではなく混合栄養(母乳+人工乳)を推奨する
B 飢餓を防ぐために科学的根拠に基づいた生理的体重減少の定義を設ける
C 正期産児(2500g以上)の出生時から退院までの毎日の体重を母子手帳に記入し、記録に残す。科学的根拠に基づいた日本版の出生時からの『体重発育曲線』を作成する。
D 赤ちゃんは「3日分の水筒と弁当を持って生まれてくる」の説は科学的根拠がないことを、助産師と国民に通達する(赤ちゃんは、この3日分の水筒と弁当説の犠牲になっている)
E 厚労省は、出生直後のカンガルーケア・完全母乳を積極的に実践する全国の「赤ちゃんに優しい病院(BFH)」の認定制度を直ちに中止する。BFHは出生直後の体温管理(低体温の予防)・栄養管理(低血糖・飢餓の予防)が科学的根拠に基づいて行われていない。BFHではカンガルーケア中の心肺停止事故が繰り返されている。
F 現代産科学教科書の間違いを改訂する
・出生時からの2℃の体温下降は生理的体温下降ではなく、体温管理(保温)が必要な『低体温症』である(最重要).
・初期嘔吐・重症黄疸・新生児の−7%以上の体重減少は、生理的ではない。
・SIDSの定義を見直す(SIDSは原因不明の病気ではない、SIDSの3大危険因子から人工ミルクを削除し、着せ過ぎに注意を追加する)。

<結論>
寒い分娩室(約25℃)における出生直後のカンガルーケア(早期母子接触)と生後3日間の完全母乳は、新生児を低体温症(一過性の低体温ショック)と飢餓(低血糖症・重症黄疸・脱水)に陥らせます。また肥満妊婦・運動不足・夕食後にデザート(果物・ケーキ・アイスなど)を食べる習慣のある妊婦さんは、子宮内の胎児を高インスリン血症(膵臓の過形成)に陥らせています。当院のデータでは、妊娠糖尿病の母親からではなく、正常妊婦から6人に1人の新生児が高インスリン血症児でした。日本で発達障害児が急激に増えた理由は、出生直後の体温管理(低体温の予防)と栄養管理(低血糖・飢餓の予防)が行われていないからです。現代産科学は低血糖症の3大危険因子(高インスリン血症+冷え性+飢餓)による(無症候性)低血糖症を見逃しています(図23)。

母乳育児推進運動が始まった1993年以前の日本の伝統的な新生児管理法に戻らなければ発達障害児・児童虐待の増加に歯止めを掛ける事が出来ません。昔の産婆さんは、なぜ産湯に入れていたのか、なぜ人工ミルクを飲ませていたのか、昔の産婆さんと現代の助産師の新生児管理法は全く違います。産婆さんは、長年の経験から産湯と乳母(もらい乳)で赤ちゃんを低体温と飢餓(低栄養・脱水)から守っていたのです。日本のお産の常識(カンガルーケア・完全母乳・母子同室)を見直さなければ、6人に1人が発達障害児になると予測します。我が国で、急速に普及した寒い分娩室でのカンガルーケア(早期母子接触)と早期新生児(生後1週間)の完全母乳を見直さなければ日本は崩壊します。児童虐待防止法では、新生児を低体温症・飢餓(著しい体重減少)に陥らせ、子どもの心身の正常な発達を妨げる医療行為は児童虐待(ネグレクト)に相当すると定義されています。